瀬戸正人写真展「Last Film」と「記憶の地図」

東京都写真美術館と新宿のPlace Mで瀬戸正人氏の写真展が開かれているので、それぞれ年末と年初に鑑賞しました。両方を鑑賞して気がついたのですが、ふたつの展示は相補関係にあるので、どちらも鑑賞できたのは実によかったです。

まず、東京都写真美術館の瀬戸正人展「記憶の地図」は、昭和末期の1980年代から最近までの作品を、いくつかの写真プロジェクトを通じて概ね年代順に展示する構成でした。また、タイトルも「記憶の地図」とあるように作家自身を回顧する展示と言えますし、自分も半分近くの作品は初めて展示された頃にリアルタイムで鑑賞していたので、過去を振り返るような鑑賞体験を予期して会場へ足を運びました。

ところが、実際に作品と向き合って感じたのは、現代の日本を予感させるような数々のイメージです。直接的には主にアジア各国から日本へ来て、様々な生活を営んでいる外国人を撮影した連作や、あるいは福島を継続的に撮影したシリーズですが、その他にも公園のカップルを撮影した写真企画や、作家自身の過去を振り返る作品にも現在の日本、少なくとも東京を予見するかのようなイメージが散りばめられていました。

もちろん、作家は写真を通じて社会と向き合っているので、過去の写真に現在との連続性を見出すのは当然でもありますが、自分は単なる連続性を超えた未来へのまなざしとも言えるなにかを感じたのです。

その点で、新宿のPlace Mで開かれている「Last Film」は、写真美術館の「記憶の地図」ときれいな対称をなしているように感じられました。

とにかく、観るものが全て懐かしいのです。これは、展示作品の撮影時期が比較的古く、概ね昭和末期から平成初期の風景という要素も大きいのですが、単に写り込んでいる存在が鑑賞者の記憶と紐付いているだけではない、なにか過去へのまなざしを思わせる写真でした。

こういうわけで、ふたつの展示は未来と過去をまなざす、きれいな対称を描いているように思いますし、そもそもが相補的な企画ですので、ぜひとも会場へ足を運んでいただけたらとおもいます。