橋本清志写真展「鯉の領域」

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アイデムフォトギャラリー「シリウス」にて開催中の橋本清志写真展「鯉の領域」を鑑賞しました。

展示の内容などについてはギャラリーのブログ(橋本清志写真展「鯉の領域」)に丁寧な解説があるので、そちらを参照してください。

ただ、ブログでは己斐から鯉へ転じた地名の由来と展示タイトルとの関係も語られていますが、それはあくまでも「鯉」へ転じた後の己斐で、西広島が舞台ではありません。

展示作品は中判カメラで撮影された銀塩写真で、端正に引き締まったプリントの心地よさが、記憶の片隅にしまい込んでいた地方都市の情景を甘く引き出してくれます。また「鯉」との関連で広島城とカープも出てきますが、やはりかつての市民球場やモダンな公園として整備されつつある途上の広島城を撮影した作品にも、作者の土地へ注ぐ目線の優しさや甘やかさがにじんでいました。

それはトーンやコントラストの柔らかさ、描写の甘さによるものではありません。描写はむしろ正反対といっても良く、広角レンズのパースペクティブを活かした画面構成や、階調表現も硬すぎず柔らかすぎずに調和した中庸そのもので、キャプションも最低限のアノニマスな、つまり無名性を意識したものでした。

そのような作品は特定の地域を取り上げたテーマ性に相反するものがあるように感じられるかもしれません。しかし、展示としての効果は正反対で、むしろ特定の地域がテーマであるからこそ、明暗の調和を意識した描写や広く情景を取り込む画面構成によって、鑑賞者の記憶を引き出す作品となっています。

そして、そのような無名性へも目配りした作品は、必ずしも広島市のみに依拠するものではなく、昭和末期から平成初期という時間軸における地方都市というひとつの典型への眼差しも含んだ、幅の広いものとなっています。

とてもおすすめの展示です。ぜひ、会場へ足を運んでください。


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